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物語の書き出し・クライマックス「のみ」を365本書いてみようという試み
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「お代わり!」
 居候、三杯目にはそっと出しなんてことわざは嘘だと健二は思った。
 正確には居候ではないのだが。
「おめー、食い過ぎ。もうジャーの中空っぽだぞ」
「健二の前に置いてあるの、ちょうだい」
「馬鹿言え。これは俺んだ」
 というよりも早く、言実(ことみ)の手が伸びて半分ほど残った茶碗のご飯を一呑みにした。

 ぎょっくん。

 恐るべき早食いである。実際、言実は大食いの上早食いなので、食費がかさんでたまらない。
「あー、美味しかった。おかわりまだある?」
「他人様の話はちゃんと聞きやがれでございますですよ?」
 箸を逆さまに持って、柄の方で言実の頭をぺちぺちと叩いた。
「やーん! ドメスティックバイオレンス、略してドスバ?」
「妙な略し方をするなよ」
 ご飯だけでは足りなかったらしく、執拗におかずを狙ってくる言実の箸を払いのけながら健二が言う。
「健二のケチ。夫婦でしょ、あたし達。夫婦はなんでも分け合うものよっ!」
「親が勝手にやったことだ。おまけに脅されてたしな。子供を犠牲にする奴がどこにいる」
「あら。あたしの両親は大賛成だったけど?」
「未成年同士だからな。両親の同意がなきゃ結婚でき……って、お前! 俺のチキンカツを!」
 隙を見て健二の皿からチキンカツの奪取に成功した言実が、一瞬のうちにカツを頬張って丸呑みした。

 ぎょりっ。

「ん~~~~~っ!!」
「馬鹿め、衣で喉を痛めたのか。ほれ、ぬるい茶があるからこれを飲め」
 自分の湯飲みを差し出してやる。言実は健二が口をつけて半分ほどになったお茶を一気に飲み干し――。

 ぶふっ!

 むせて、鼻から吹き出した。学校では清楚な美少女……というか美幼妻(という言葉があるかどうかは知らないが)として通っているのだが、実態はこれである。
「あーあ、もうしょうがねぇなぁ……」
 立ち上がって、けほけほとむせている言実の背中をさすってやる。
「飯は逃げないんだから、そんなにあわてるなよ」
「だって、だって、健二のご飯、美味しいんだもん。でもって、一杯食べたいんだもん」
 うるうるとした目で見られるとぐっとくるものがあるが、鼻水が出ていては百年の恋も冷めるというものだ。
 健二はティッシュで言実の顔を拭いてやり、ぎゅっと抱きしめてやった。
「わかったわかった。お前が食いたいだけ作ってやる。リクエストなんだ、ほら。言ってみろ」
 何にせよ実際に夫婦なのだし、やることもやっちゃってたりするので、半年前までのように手が触れあうだけで顔を真っ赤にさせるようなことにはならない。
(あー、俺も順応しちゃってんなぁ)
 とか健二が思うのも無理もない。

 山根健二、18歳。
 同・言実、16歳。

 これは高校生の身で結婚することとなったふたりの、血と汗と涙の記録である。

「あのね。バケツプリン、食べたいな。できればマンゴープリン」
「バケツかよっ!」
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