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物語の書き出し・クライマックス「のみ」を365本書いてみようという試み
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 新奈(にいな)の通っている学校は都市郊外の山の中にある。
 高校と大学が併設されていて、大学は都市部と郊外の二か所に別れている。三十年ほど前までは高校だけだったのだが、大学部を新設する際に高等部は郊外へ移転し、大学部も二か所に分けて設立された。
 大学二年までは郊外で授業をし、三年からは都市部へ移ることになっている。
 だが、新奈が通っている高等部は卒業するまで都市郊外のままだ。大学部に進学すれば、都合合計五年間を何もないへんぴな場所で過ごすことになる。
 ケータイの電波は届くけれど遊ぶ場所など無く、まさに陸の孤島。実はこのケータイですら数年前までは使えなかったのだ。
 学校の購買部を除けば、買い物をする場所すらない。ファーストフードのチェーンはおろか、コンビニすらない。自動販売機だって、学校の構内にしか存在しない。
 敷地を一歩出れば、そこは自然の楽園が広がっている。時々、タヌキなどの野性動物が構内をうろつくほどだ。
 空気もいい。
 しかし、新奈は女子高生だ。友達だってもちろん、女子高生である。
 ティーンの少女にとって、自然などさほどの価値を見出すことができるものではない。彼女らが求めるのはもっと刺激的なことなのだ。
 そんな退屈を持て余していた彼女達の元にやってきたのが、ミカサだった。朝のホームルームで担任の老女教師と共にやってきた彼女は、白のブラウスと黒のタイトスカートに身を包んだ小さな背を精一杯伸ばし、ヒールを気にしながら教壇の横に立った。

 ミカサ……そう呼んでくれと彼女は言った。

 転校生ではない。臨時の講師だったが、ひどく若く見えた。
「年はいくつですかぁ?」
 無遠慮な質問に、彼女は指を二本立てた。
「はたち!?」
「若っ! って、大学出てない?」
 静かにと教師が手を叩いても、教室は静まることはなかった。
「来月が誕生日だから、本当はまだ十九なんだけど」
「ええーっ!?」
 なんでも、海外の大学を飛び級で卒業してきたらしい。
「静かに。しーずーかぁーにっ!」
 老女教師が声を張り上げるが、珍しいイベントに教室は興奮状態だ。

 結局、朝のホームルームが終るまで教室が静まることはなかった。
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