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物語の書き出し・クライマックス「のみ」を365本書いてみようという試み
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 宙を動く剣先に光が宿る。
「ティーオ、レイ、アクト――」
 今日は何度この呪文を唱えたかわからない。
 メディルは精神を集中し、気合いと共に剣をゴーレムに向かって叩きつける。
「えいっ!」
 細身の剣は易々と石造りの怪物を貫き、コアを破壊する。同時に、緩慢ながらも恐ろしい力を秘めたゴーレムの動きが、ぴたりと止まった。
「ふぅ……」
 汗でびっしょりと濡れた顔を薄汚れた布で拭く。最初は装備が汚れることを嫌っていた彼女も、長時間の試しの迷宮の道筋を行くうちにだんだんとそんなことに構わなくなっていた。
 おろしたての盾も鎧も、所々がへこんだり傷ついたりしており、細身の剣も血糊で汚れ、彼女がたどってきた道程の厳しさを物語っていた。
 メディルは周囲に気を配りながら、部屋の中を調べて罠が無いかを確かめる。そうしてからようやく壁に背を預けて腰を下ろし、休息をとった。
 油の減り具合から考えると、ここに入ってから半日が経過しているはずだった。体は水を吸ったように重く、疲労は頂点に達しようとしている。
「まだ、先は長いわ……」
 誰に言うともなしにメディルは呟く。
 魔法剣士として独り立ちをしようとしている彼女にとって、試しの迷宮を突破することが最初の一歩となる。若手の剣士らのために作られた迷宮だが、これを突破することは決して易しくない。最後までたどり着く者は、三割にも満たないという。
 だが、彼女は途中で脱落するわけにはいかないわけがあった。無意識に胸当ての下にある黒水晶のペンダントのある場所に手を持ってゆく。
 負けられない。
 メディルはからからになっている口に軽く水を含み、喉を湿らせる。迷宮内では水がわいていても信頼はできない。致命的ではないだろうが、毒が混じっているかもしれない。持ち込んだ水だけが頼りだ。そして団子状にして蒸した雑穀を食べ、腹を満たす。最後にもう一度、少し水を飲む。
 もう少し休んでいたいと悲鳴を上げる体に鞭を打ち、メディルは立ち上がった。

 魔法剣士メディル、十六歳。
 『アウサクの惨劇』最後の生き残り。
 そして王位継承第四位の、王女でもある……。
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