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物語の書き出し・クライマックス「のみ」を365本書いてみようという試み
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「コシヌーケ」
「コシヌーケ!」
 なにやらやたらと腹の立つ言葉に聞こえる鳥の声が聞こえている。
 周りはにょきにょきと驚くほど高く伸びた見たこともない樹木が生え、見事な翡翠色に輝く羽の鳥が、俺を腰抜けとあざ笑うかのように鳴きながら飛んでいる。そう遠くないところから波音も聞こえている。

 なんなんだよ、これ。

 正直言って、頭が真っ白だ。
 現在のこの真っ昼間の南の島らしき場所への変化の差があまりにも激しすぎるが、手に持っているコンビニの袋と、まだ溶けてもいないアイスが、俺の体感時間が真夜中のコンビニからの帰り道の途中であったことを雄弁に物語っている。

 どこは、ここだ?

 しょうもないギャグを脳内でかまして、溶けかけているアイスを囓った。冷たさが歯に染みて痛い。
 やはりこれは現実らしい。
 しゃくしゃくと一本税込み52円の棒アイスを無心に食べ続けていた俺の目の前に、肌もあらわだが締まるところは締まった赤毛の女性が草陰の中から姿を現し、指を突きつけて言った。
「お前は何者だ」
 正直なところ、最初は何を言っているのかわからなかったが、二度目の質問の時にはすぐに理解することができた。外国語などまるでだめな俺だというのに、聞いたこともない言葉がすんなりと理解できたのは驚きだった。
「正直なところ、さっぱりわからん。名前は、新島英一(あらしまえいいち)。単なる学生だ」
「エイイチ殿か。私に付いてこられよ」
 俺に背を向けようとした彼女に向かって、俺は訊ねた。
「あのさ、ひとつ変なことを聞いていいか?」
「何かな?」
 俺は空を飛んでいる翡翠色の鳥を指さした。
「あの鳥、なんて言っているかわかるか? たとえば……腰抜けとか」
 すると赤毛の女性は眉をしかめて言った。
「ホゥッカ鳥は人の言葉をしゃべりはしないが」
「そうか。すまん」
 どうやら、あの鳥の鳴き声は偶然日本語に似ているだけらしい。そして、今俺が彼女と交わした言葉は、間違いなく俺にとっては未知の言葉だった。
 困った。
 どうやら俺は、別世界に飛ばされてしまったらしい……。
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