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物語の書き出し・クライマックス「のみ」を365本書いてみようという試み
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 萱名木志都子にとって恋とは、自分とは永遠に縁のないものだと決めつけていた。
 政治家の一人娘として、婿を取って父の政治基盤を受け継ぐということは、既に中学入試の段階でほぼ固まっていた。一流校ではあったが、中央官庁へと進むエリートコースに乗るほど高いレベルの学校ではなかったからだ。顔は整ってはいたが内向的で、人付き合いの苦手な性格の彼女に政治家はどのみち無理だった。
 婚約者の候補も既に何人か上がっている。
 一番は、やはり萱名木誠吾の側近である名護宗太郎だ。志都子も兄のように慕っていたが、年齢は一回り以上も離れている。恋の対象とはなりにくい。
 自分の役割を認識し、母に付いて政治家の妻とはどういうものかを考えていた彼女にとって、恋と結婚はイコールではなく、家庭に恋は必ずしも必要ないということを結論づけていた。
 だが、恋は唐突に、嵐のように訪れる。
 二人の少年と、一人の少女によって。

 彼女らと彼ら四人の、忘れられない春が――やってきた。
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