物語の書き出し・クライマックス「のみ」を365本書いてみようという試み
「おはようございます」
耳元で誰かが囁いている。くすぐったさに耐えきれず頭の横を手で払うようにすると、何かが手に当たって頭から転がり落ちた。
目を開けると、小さな何かが目の前にあった。
「おはようございます」
小さな緑の帽子をかぶった、四頭身くらいの小さな人影がぴょこんと頭を下げた。
なんだ、夢かと目をつぶりかけて時計を手元に引き寄せる。
六時三十分。
そろそろ起きないと朝飯を食い損ねる時間だ。
「起きないと寝坊しちゃいますよ?」
「なにっ!?」
目が完全に覚めた。
なんだ、これは!
子供向きの童話かアニメにでも出てきそうなモルモット大ほどの小さな人影が、枕元に立って小首をかしげ、こちらを見上げていた。
「今日からここにお世話になるチロルといいます。よろしく!」
「ちょっと待て。お前、どこからきた。お前は何者だ」
「私はチロルです。妖精の国からやってきました」
「妖精って……」
目眩を起こしそうになりながらテレビのリモコンを操作すると、ちょうど朝の報道番組をやっている局だったのだが、そこにも同じ人影を見つけ、反射的にスイッチを切った。
「ああん! 今の何ですか?」
「テレビだよ」
答えるのももどかしく、MDコンポのスイッチを入れAMラジオに切り替える。
「なんてこった……」
そこでもやはり、突如として出現した妖精に関するニュースを、アナウンサーが興奮気味に伝えていた。
こうして日本を揺るがす「妖精の日」が明けたのだ。
耳元で誰かが囁いている。くすぐったさに耐えきれず頭の横を手で払うようにすると、何かが手に当たって頭から転がり落ちた。
目を開けると、小さな何かが目の前にあった。
「おはようございます」
小さな緑の帽子をかぶった、四頭身くらいの小さな人影がぴょこんと頭を下げた。
なんだ、夢かと目をつぶりかけて時計を手元に引き寄せる。
六時三十分。
そろそろ起きないと朝飯を食い損ねる時間だ。
「起きないと寝坊しちゃいますよ?」
「なにっ!?」
目が完全に覚めた。
なんだ、これは!
子供向きの童話かアニメにでも出てきそうなモルモット大ほどの小さな人影が、枕元に立って小首をかしげ、こちらを見上げていた。
「今日からここにお世話になるチロルといいます。よろしく!」
「ちょっと待て。お前、どこからきた。お前は何者だ」
「私はチロルです。妖精の国からやってきました」
「妖精って……」
目眩を起こしそうになりながらテレビのリモコンを操作すると、ちょうど朝の報道番組をやっている局だったのだが、そこにも同じ人影を見つけ、反射的にスイッチを切った。
「ああん! 今の何ですか?」
「テレビだよ」
答えるのももどかしく、MDコンポのスイッチを入れAMラジオに切り替える。
「なんてこった……」
そこでもやはり、突如として出現した妖精に関するニュースを、アナウンサーが興奮気味に伝えていた。
こうして日本を揺るがす「妖精の日」が明けたのだ。
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「ごめんなさい。あなたとはつきあえません」
俺の36連敗が確定した瞬間であった。
彼女は脇目もふらず俺の横を抜けて、出口へダッシュして店から出て行ってしまった。後に残されたのは、彼女の口紅がほんのりとついた、口をつけただけのティーカップ。そして、レシートが。
「GYIIIIIIIIIIIIIIIッ!!」
俺がそのカップを手に取ろうとした時を狙ったかのように、俺の真後ろで十数人の全身タイツ姿の怪しげな一団が、奇声と共に立ち上がった。
「GYIIIッ!」
まるで特撮ドラマの戦闘員のような、いや、戦闘員そのものがそこにいた。
俺が頭を抱える前に、戦闘員に輪をかけて怪しい人物が立ち上がった。
「おーっほっほっほっほっほっほっほっ! それごらんなさい。あなたにあのような小娘は相応しくないのです。たかが怪人の十や二十くらいで逃げ出すとは、世界の支配者の配偶者の資格などありはしないのです」
「GYIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIッ!!」
「うるさいっ!」
俺が立ち上がって奴らを怒鳴りつけると、店の人が俺をぎろっと睨みつけた。
なんで俺を睨むんだ。いや、わからなくもないけど。
なにしろ目の前に立っている女性は、ボンデージ姿そのものにとげとげした装飾品を全身にまとっているのだ。いくらどう見てもGカップはありそうな巨乳の美女とは言え、関わり合いになりたいと思う人間などいるはずもない。
実際には何人か声をかけてきた好き者もいたけど、すぐに戦闘員に掠われてどこかに連れて行かれてしまった。その後、戦闘員が増えているから……ちょっと想像したくないことが起きているような気がする。
「さあ、我々と共に世界征服を!」
そう。俺には、世界征服を企む秘密結社の一団が取り憑いているのだ……。
俺の36連敗が確定した瞬間であった。
彼女は脇目もふらず俺の横を抜けて、出口へダッシュして店から出て行ってしまった。後に残されたのは、彼女の口紅がほんのりとついた、口をつけただけのティーカップ。そして、レシートが。
「GYIIIIIIIIIIIIIIIッ!!」
俺がそのカップを手に取ろうとした時を狙ったかのように、俺の真後ろで十数人の全身タイツ姿の怪しげな一団が、奇声と共に立ち上がった。
「GYIIIッ!」
まるで特撮ドラマの戦闘員のような、いや、戦闘員そのものがそこにいた。
俺が頭を抱える前に、戦闘員に輪をかけて怪しい人物が立ち上がった。
「おーっほっほっほっほっほっほっほっ! それごらんなさい。あなたにあのような小娘は相応しくないのです。たかが怪人の十や二十くらいで逃げ出すとは、世界の支配者の配偶者の資格などありはしないのです」
「GYIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIッ!!」
「うるさいっ!」
俺が立ち上がって奴らを怒鳴りつけると、店の人が俺をぎろっと睨みつけた。
なんで俺を睨むんだ。いや、わからなくもないけど。
なにしろ目の前に立っている女性は、ボンデージ姿そのものにとげとげした装飾品を全身にまとっているのだ。いくらどう見てもGカップはありそうな巨乳の美女とは言え、関わり合いになりたいと思う人間などいるはずもない。
実際には何人か声をかけてきた好き者もいたけど、すぐに戦闘員に掠われてどこかに連れて行かれてしまった。その後、戦闘員が増えているから……ちょっと想像したくないことが起きているような気がする。
「さあ、我々と共に世界征服を!」
そう。俺には、世界征服を企む秘密結社の一団が取り憑いているのだ……。